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ハイチの人々と私たち〜教育を受けられない子どもたち〜

ハイチと日本と両国の大きな違いは、何よりも国民が受けている教育の差だと言えます。日本は江戸時代の寺子屋に始まり、明治時代には義務教育が徹底され、国民のほとんどが読み書きできるようになりました。また、より高度な教育を受ける機会もあり、考える力や行動力を育てることができます。

そのため日本人は、世界中の人々も自分たちと同じような教育環境にあると錯覚してしまうかもしれません。しかし途上国には、自分の名前さえ書けない人も大勢居ます。

ハイチでは、成人の識字率は62%です(「2010年世界子供白書」より)。国の貧しさや政治の混乱により、子どもたちの約半数は学校に通うことができず、水汲みや幼い弟妹の世話などの家事労働をする子どももや、ストリートチルドレンとして自分の命を守ることに精いっぱいな子どもも居ます。

 そもそも地域に学校が無いこともあり、子どもたちは教育とはかけ離れた環境で育っていて、ハイチの就学率は初等教育50%、中等教育19%と極めて低い状況です(「2011年世界子供白書」より)。さらに児童労働率21%、児童婚率30%、ドメスティック・バイオレンス(DV)率29%と、子どもたちはとても過酷な状況に置かれています(「2011年世界子供白書」より)。

そこで、「ハイチの会」は、国の根本的な教育問題を解決することはできなくても、1人でも多くの子どもたちに学ぶ機会を与えたいという想いで活動を始めました。

1986年の設立時から、貧しい子どもたちを対象にハイチの8ヶ所で識字学校を開き、また2007年からは、地域住民からの強い要望を受けて、エンシュ市ボナビ村の山間部にこの地域では初めての教育施設を開設しました。この小学校では、5歳から19歳までの生徒が、年齢ではなく個々の理解度に応じて学んでいて、地域住民による運営を「ハイチの会」が継続支援しています。

教育支援というのは学校を建設することではなく、むしろ建設した後から始まる継続支援が大切です。教師の給料、教科書、制服、給食費を支援し続け、ハイチの人々が自立して学校を運営できるようにする必要があります。生徒数300人ほどの小学校1校舎を建てるには約700万円かかり、継続支援には年間約200万円(生徒1人当たり7千円)が必要ですが、教科書はみんなで共有するなど工夫をしています。そして学校給食は、1日1食すら得られなかった子どもたちにとって、1日の糧となる大切な存在です。

ハイチの人口は約1千万人で、人口比の出生率は、日本が8%であるのに対し27%、10~19歳の割合は日本の9%に対し23%と高い一方、65歳以上の割合は日本の22%に対し3%しかありません(「2012データブックWORLD」より)。

生まれる人の数は多いのに、若くして死亡してしまう人の数も多いという悪循環を断ち切るには、国の保健衛生、経済、政治を変える柱となる「教育」が必要です。トイレを学校に併設するだけではなく「なぜトイレが必要なのか」を生徒や親、地域住民が理解することで疫病が防げます。

 

 

識字教育で字が読めて書物が読めるようになれば、不利な契約書にサインをしなくなります。農業の授業で知識を深めれば、食糧の生産力を増やすことができます。「教育」により、ハイチの子どもたちが世界の広さを知り、ハイチの貧しさを自覚し、その結果、「自分たちは何をすべきか」を考える力が育つことを、私たちは願っています。ハイチの自立への歩みを見守ってください。

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